時間と幸福感

時間を買うと幸福度アップ?

 米国の研究グループが人間の幸福に関する最新の調査結果を発表した。そのリポートによると、「モノよりも時間を買った方が幸福度が上がる」傾向が強いようだ。BBCの記事から引用してみたい。

In an experiment, individuals reported greater happiness if they used £30 ($40) to save time - such as by paying for chores to be done - rather than spending the money on material goods.

 

ある実験の中で人々は40ドルを使って時間を節約する(例えば、やる必要がある雑事にお金を払う)方がモノに同額を費やすよりも幸福度が上昇したと述べた。 

 この調査は、アメリカ、カナダ、デンマーク、オランダに在住する6000人以上の成人へのアンケートに加え、カナダのバンクーバーで働く60人に対する2週間の実験が含まれた。

On one weekend, participants were asked to spend £30 ($40) on a purchase that would save them time. They did things like buying lunches to be delivered to work, paying neighbourhood children to run errands for them, or paying for cleaning services.

 

週末に参加者たちは、40ドルを使って時間を節約する買い物をするように依頼された。彼らは職場まで配達して貰えるランチを買ったり、お小遣いをあげて近所の子供たちに雑用をさせたり、クリーニング・サービスにお金を払ったりした。

 

On the other weekend, they were told to spend the windfall on material goods. Material purchases included wine, clothes and books.

 

別の週末には、思いがけず得たお金でモノを買うように指示された。購入品には、ワイン、洋服、書籍などがあった。

 その結果、時間に対するストレスが減少したため、時間を買った前者のケースの方が幸福度が上がったと結論付けている。ただ、冷静に考えると、これはある程度、当然の結果のようにも思える。モノを買って得られる幸せは、一過性の場合が多いだろうし、モノが増えると管理コストが増えてストレスが溜まる。そもそもモノが手に入れば幸せになるという発想自体にバイアスがあるんじゃないだろうか。

時間欠乏症(time famine)

 この調査が実施された背景には、世界中で起きている慢性的な時間欠乏症(time famine)への問題意識があるようだ。

Psychologists say stress over lack of time causes lower well-being and contributes to anxiety and insomnia.

 

心理学者が言うには、時間不足のストレスは、健康状態の低下を引き起こし、不安や不眠症の原因となる。

 

Rising incomes in many countries has led to a new phenomenon. From Germany to the US, people report "time famine", where they get stressed over the daily demands on their time.

 

多くの国々での所得の上昇は、新しい現象を生み出している。ドイツでも米国でも人々は「時間欠乏症」(time famine)を訴えており、自分たちの時間に対する日々の要求にストレスを感じている。

 時間不足には、二つの側面があるように感じる。まず、仕事や家事が多忙で時間が足りず、自力で改善するのが難しいケース。この場合は、リポートにあるように、ある種の雑用を外注できれば、楽になるのかもしれない。 

 もう一つは、やりたいことが多過ぎる(と思っている)ケース。例えば、早起きしてジムで汗を流したり、仕事の後も勉強会や飲み会に参加したり、週末も予定でいっぱいだったりする人は少なくないと思うけど、あまり詰め込み過ぎると時間が足りなくなるのは仕方ないだろう。個人的には、メディアの「これもすべき!あれもすべき!」というメッセージからは距離を置いて自分のペースで生きるのがいいと思うな。

お金と時間の優先順位

 時間が足りない原因は、もちろん仕事だけではないはずだけど、労働時間とそれに付随する行為(通勤など)が日常生活の大半を占めるのも事実。これは改めて考えてみると不思議な感じがする。お金を得るために時間を費やして働いたのに、今度は幸せになる鍵は時間をお金で買い戻すことだとリポートは示唆しているからだ。要するに、時間配分の問題で、仕事もほどほど頑張って、プライベートもほどほど楽しんでってのが理想なんだろうけど、長時間労働が深刻な日本では、労働と余暇のバランスが正常値から大きくズレているはずだ。僕はあまり偉そうなことが言える立場にはないけど、BBCの記事はこう締めくくっている。

Past research has found that people who prioritise time over money tend to be happier than people who prioritise money over time.

 

過去の研究によれば、お金よりも時間に優先順位を置く人の方が時間よりもお金に優先順位を置く人よりも幸せを感じる傾向があることが分かっている。